タイと日本の生活費や物価について様々な記事を見かけますが、主観が強く安く見積もっている人が多いです。
その人の生活によって比較対象が変わってくるので、比較するのは難しいんですが、過去にバックパッカーをやっていた方が、軒並み旅価格で比較されているのが目につきます。
また物価の比較と、いくらで生活できるかが混同されているものが多いのですが、ここで比べるのはあくまで物価の比較になります。
「タイでいくらで生活できるか」ではなく、「日本でしていた生活をタイでするといくらになるか」を計算するのに、何がいくらするのかを計算するための物価比較です。
物価比較の罠
TVやブロガーさんは、タイの物価を伝える際に安くないとネタにならないから、安く見えるように比較しようとします。
例えばタイの屋台での食事は、タイの物価を考えても安いものなのですが、貧富の差があり、外食が基本のタイだから成り立つ価格といえます。
屋台業を営む人の収入は低く競争も激しいですが、外食する人が多いので薄利多売でやっていける。だからタイの屋台飯は、実際の物価より一層安くなるというからくりです。
またTV番組は安いインパクトを強めるために、為替レートの端数を切って、安く見せますのでこれも誤解を生む大きな要因です。
タイと日本の物価の比較前提
まず、比較前提。これが最重要だと思います。
例えば食事だと、よくTVで「1食日本円に換算すると100円。安ーい」
みたいな番組をよく見かけますよね。確かにタイの食事は安いんですが、これ前提が違うので全く比較できないんです。
どういうことかというと、タイの屋台で35バーツ(125円)出せば、確かに食事ができるところは多いです。
ただこれって、熱いタイで、道沿いに並べられた屋台で、プラスチックやスチールの食器で、衛生面もそれほど良くないないお店で、日本より少ない量のご飯を食べて、125円ということになります。
これと同じ条件のお店って、日本にないんです。
なので、単純に比較できない。タイには、こういう選択肢があるに過ぎないということになります。
また食事の価格以外の部分で、サービス面はかなり高い店か、例外的に気が利くタイ人がいる店以外だと、同じレベルの店で比較できません(日本のサービスレベルが高すぎます)。
比較都市は東京とバンコク
自分が詳しい土地である東京とバンコクの比較にさせてもらいます。日本、タイどちらも地方とは価格が違います。
また、タイの地方都市では、外国の料理を出すレストランがなかったり、日本以上に地方と都市の格差が激しいのでバンコクを比較対象にします。
タイの食費(外食)
タイの食事はローカル(地元民)向けのエアコンが効いたお店以上を条件にします。
またローカル向けといっても、都市の中の場所や店のレベルで価格差があります。そこは僕の感覚で同等のお店を選びます。
タイのご飯の中で量が少ないものは大盛りを基本の料金とします。(基本タイのご飯は量が少ない)
■庶民向けレストラン(日本の定食屋)
タイには定食がないので、単体料理の比較を基本とします。
・タイローカルレストラン
チャーハン70バーツ(250円)、タイカレー90バーツ(320円)、空心菜炒め60バーツ(215円)、白ごはん10バーツ(36円)、水10バーツ(36円)
・日本
チャーハン700円、カレーライス700円、野菜炒め600円、白ご飯150円、みそ汁、水無料、漬物無料
水は必ず飲むとして、1食80バーツ~120バーツ(290円~430円)ぐらいになりますので、1食当たり大体40%ぐらいの換算になります。
ただし室内・エアコンという条件で、日本での食事を吉野家、富士そばなどのチェーン店にすると80%ぐらいの価格になります。
また日本で美味しいといわれる店と同等レベルの味をバンコクで求めると、日本より高い。日本のお店は食材にこだわっている店が多いですが、タイにはこの価格レベルで、そういったお店はありません。
■中華料理
バンコクで中国人が多く住むホイクワンの中華料理屋と、日本で中国人がやっている中華料理屋を比較対象とします。
・タイの中華料理屋
麺料理100バーツ(360円)、マーボー豆腐120バーツ(430円)、餃子100バーツ(360円)
・日本の中華料理
麺料理800円、マーボー豆腐800円、餃子600円(日本の餃子は量が少ないので400円×1.5)
大体50%ぐらいでしょうか。
※その他の国の料理は日本より高いので割愛します。
という感じで、意外と高いです。
週に3回日本食を食べて、基本はローカルレストラン。たまに屋台を使って、日本比較50%ぐらいの出費レベルで、日本と変わらない食事になると思います。
タイのカフェの価格
20年前は一部の外資系を除けば、カフェなんて全くなかったんですけど、現在のバンコクは東京都比べても遜色のない数のカフェがあります。
日本と同じようにコンビニのレジでカフェメニューを頼むこともできます。
一般的な価格をどこに置くかですが、スターバックスに置いてしまうと日本ではやや高い店で、タイでは高級店になってしまいますので、ドトールとタイのショッピングモールにあるローカル向けのカフェにします。
・タイのカフェ(アイスラテのグランデ)
タイローカル向けのカフェ60バーツ(215円)、コンビニ40バーツ(145円)
・日本のカフェ
ドトール320円、 コンビニ216円(日本のコンビニはサイズが小さくて、牛乳が少ないので倍にしています)
大体65%ぐらいになります。こう見ると、いかに屋台のご飯が安いかが分かります。
タイのマンション・アパート
タイの住居費。これが日本に比べて一番お得感があると思います。
これまた比較が難しいのですが、僕らは外国人としてタイに住むので、言葉の問題やセキュリティ、設備を考えて、ほとんどの人が外国人向け、裕福なタイ人向けの物件に住みます。
バンコクの一般的なタイ人向けのアパートが5,000~7,000バーツ(17,500~24,500円)、外国人向けが10,000~15,000バーツ(35,000~52,500円)。これぐらいの差額なら、諸々充実している物件の方が良いとなります。
そのため、物価比較率より日本人は高い物件に住んでいます。(東京だと1ルームで10万円以上の部屋に住んでいる感じです)
ちなみに、タイの物件はアパートメントと呼ばれる集合住宅(日本の一般的なマンション)、コンドミニアムと呼ばれる分譲物件(日本のタワーマンション)に分かれます。
日本と違う点としては、アパートはキッチンがない物件が多いです。
コンドミニアムはキッチン、洗濯機が備え付けであります。またプールやジムなどの共有設備もあります。また、共にベッドやソファ、TVや冷蔵庫などの設備は予めついています。
基本的に一般的なタイ人はアパートメントに住みます。(実家率がかなり高いですが)
・日本のマンション(=タイのアパート)
三軒茶屋 1ルーム20㎡ 8万円 中野1ルーム20㎡ 7.5万円
・タイのアパート(外国人向け)
バンコクの中心近辺 30㎡ 12,000バーツ(43,000円) バンコクの中野 35㎡ 10,000バーツ(36,000円)
・タイのアパート(タイ人向け)
バンコクの中心近辺 30㎡ 10,000バーツ(36,000円) バンコクの中野 30㎡ 8,000バーツ(28,000円)
・タイのコンドミニアム(タワーマンション)
バンコクの中心近辺 25㎡ 20,000バーツ(72,000円) バンコクの中野 25㎡ 15,000バーツ(54,000円)
そもそも日本の部屋は狭く、タイは部屋の広さによっての価格差が日本より小さいので、やはり単純比較はできないです(家具もついてますし)。
ここでは単純に家賃比較で、お互いローカルとして考えます。そう考えると、35%ぐらいになると思います。
タイの家電・パソコン
これまた比較が難しいカテゴリです。
なぜかというと、日本人が一般的に使っている家電は、海外では基本一流ブランドになります。
つまり日本人が日常的に使っているものは、一般的なタイ人にとっては高級品になってしまいます。
そのため、一般レベルで物価比較がきないんです。
ただ日本で使っているものと同じ物の価格として強引に決めてしまうならば、130%ぐらいでしょうか。
基本的に日本の家電は120%~150%ぐらいだと思いますが、タイ製の三菱扇風機は日本より安いですし、タイで需要が高い商品は東南アジアで製造されているためか、海外・日本ブランドでも安いものがあります。
ちなみにアップル製品は120~130%ぐらい。デジカメは110%~130%、オーディオなどの趣味商品は150~200%ぐらいの価格になります。
タイの洋服代
物価比較ではないですが、単純に夏物だけでいいタイは洋服代が安くなります。ただ比較となると、これまた難しいんですが、日本の一般レベルの洋服はタイでは高級品になり、輸入品になります。
ミドルハイぐらいのタイ人でも、あまり高い洋服は着ていません。
日本で中級というと、ユナイテッドアローズ、ナノユニバース辺りかだと思いますが、これと横並びの洋服がほとんどありません。なのでこの層では比較不可能です。
ここでは物価比較として、タイでは中級として挙げられるユニクロを対象にします。そうすると大体110%~130%ぐらいになります。
着ている人はあまりいませんが、中級の洋服だと150%~200%ぐらいになると思います。
タイの生活費
ここまでいくつかのカテゴリで価格を比較しました。やはり単純比較できないので、いまいちピンとこないと思います。
結局のところ知りたいことは、「生活にいくらぐらいかかるの?」だと思いますので、私が働いていた会社で取ったアンケートデータを出したいと思います。
■アンケート対象(月間生活費)
・20~40代の日本人スタッフ約30人
・全て現地採用になります
・平均給与75,000バーツぐらい
・核となる給与レンジは55,000~85,000バーツ
・数名100,000バーツを超えています
無記名のアンケートにしましたので、リアルな数値だと思います。
- 20,000~30,000バーツ(72,000~108,000円)13%
- 30,000~40,000バーツ(108,000~144,000円)51%
- 40,000~50,000バーツ(144,000~180,000円)13%
- 50,000~60,000バーツ(180,000~216,000円)13%
- 60,000バーツ~(216,000円~)10%
日本で高い給与だった人は少ないと思いますので、日本での生活費比較だと大体55%ぐらいでしょうか
ただし帰国時の買い物代は含まれていないでしょうし、日本で国民年金を払っていればその分プラスで必要になります。
恐らく実際に使っている年間額は65%ぐらいだと思います。
また給与から厚生年金を引かれていないので、安く感じている人は多いと思います。
2019年の都市別物価ランキング
コンサルティング大手のマーサー調べによると、2019年の都市別物価ランキングでバンコクは40位でした。
調査対象都市が不明なのですが(恐らく首都だけ)、昨年から12ランクアップしているそうです。
また、世界中の地域についてデータベース化したサイト「NUMBEO」で調べてみたところ、東京は14位、バンコクは189位でした。
■NUMBEOによる、1人暮らしの生活費
・バンコク
生活費(家賃除く):20,270バーツ
アパート(郊外):10,540バーツ
円換算:110,900円
・東京
生活費(家賃除く):122,332円
アパート(郊外):76,200円
198,500円
タイ人はやや給与が高い層、日本人はやや給与が低い層になっている気がしますが、比較結果は55.8%でした。
タイの物価・出費の特徴
- 輸入品が日本より高い。タイ商品は安いが、飲食以外の品質が日本よりかなり低い
- 家賃が安く、家具付き。プールやジム付きの物件でも高くない
- 外国人向けのサービスやお店は、クオリティ以上に価格差が大きい
- タイ人の所得格差が大きいので、どの層に向けた商品やサービスかで価格差が大きい
- ④の条件があるので、どういうタイプの日本人、タイ人と付き合うかで出費が大きく変わる
- 夏しかないので、夏服しかいらいし、部屋の模様替えもしない
- 安いものの選択肢が多い
タイで予想外にかかる出費
誰と遊びに行くか、趣味がなんなのかでも出費は大きく変わります。
- 日本食、居酒屋に行く人が多い。(バックパッカータイプの人は少ない)
- タイ女性と飲める店に行くタイプの男性が多い(この為にタイに来た人の比率が高いので出費がかさむ)
- ②のタイプの人と飲む機会が多い(出会う在住日本人の数は限られているし、日本に比べると安いので利用比率が高い)
いざ出費を抑えたくても、知り合った日本人のタイプによって出費が変わります。
バンコクに日本人が多いといっても、出会う人の数は知れていて、その中で一緒に遊ぶとなると一握りの人だけになります。
まあこの点は日本も同じだと思いますが、バンコクに来て生活を変えたいなと思っていても、自分と同じ考え方の人と会う確率は低いので、ある程度はお金に余裕を持たないと人の繋がりは広がりません。
忘れがちなこと
- 厚生年金や区民税・市民税がないので、給与の額面中の使える額が多い(故に物価安いと感じがち)
- タイで割高な商品を日本帰国時に購入しているが、それを生活費に換算していない
最後に僕の見解
一般的な日本クオリティの物価は60%だけど、支出換算でいくと50%でそこそこ満足、70%でかなり満足。
これには安いものの選択肢が多いということもあるのですが、日本で中程度の給与をもらっていた人は、日本ではその安いものを選択しないと思うんです。
ただタイに来るとこれを選択するんです。
- タイは安く生活できるからタイに来ている(この時点で日本のクオリティをある程度捨てている)
- そういう人が多いから、付き合いで行く店や着るものが安くなる
- タイ人より給与が高いから、一般的なタイ人に合わせると安いもので良いと思える
- 日本クオリティを求めると、なにかと面倒くさい(場所が限定される)
- 安い選択肢が数が違う(食べ物だけでなく交通費、ホテルとか旅行なども含め)
こういった諸々の理由で、日本では貧乏っぽく感じるを生活しても、貧乏っぽいって思うことがありません。
これってすごい重要で、心の満足度のハードルが下がります。
ちなみに僕はあまりお金のことを考えないで支出比較60%で生活できています。
それでもお金をかける所とかけないの所のメリハリができたので、日本で生活していた時より、自分がお金を使いたい所にお金をかけれていますし、日本より楽しいですよ。