タイで働くことによってキャリアアップはできるのか。
ネガティブな印象を心配して、面接で直接こう聞かれることはありませんでしたが、若い方は特にこの点を気にしているのを感じられる質問が多かったです。
40歳ぐらいの方であれば、割と人生の逃げ切りと考えている方も多かったですが、キャリアップは当然気になると思います。
そこで僕なりの見解を述べてみたいと思いますので、参考程度にご覧ください。
僕の経歴
大学卒業後新卒で就職はできず、出版社のアシスタントや音楽ショップに勤務。
27歳からWEB系の会社に契約社員や派遣社員で勤務。30歳から2年間の旅に出る。
32歳からWEB系の会社でディレクター、リーダー、マネージャーを経験。
この会社がベトナム、フィリピン、インドネシアに制作拠点を持ち、各拠点の制作リソースを使っていました。
39歳に退職して来タイ。日系のWEB制作会社で2年間マネージャーとして勤務。
日タイ共に、マネージャーとして面接も担当していました。
キャリアアップの前提
まず前提として、キャリアップの対象をタイの後に帰国して日本で働く方にします。
他の国で働くとなると、どの国のどんな企業かで求められる能力が変わってしまうのと、僕自身が詳しくないからです。
タイでキャリアップは可能か?
もちろん可能ですが、日本で働く場合より難しいと思います。
またご自身のこれまでのキャリアによって大きく違います。
仕事的なキャリアアップ
同じような職種に就ければもちろんキャリアアップが望めますが、日本の一般的な企業で働くよりキャリアアップの幅は小さいと思います。
キャリアップの幅が小さい理由は、事業規模が小さいことと、それに必要な人材が十分ではないからです。
では逆に自分が色々トライできるのでは?と思われそうですが、同じ理由でそれを行うことが困難になります。
但し、タイの法律でBOI認定を受けていない企業は、日本人1人の雇用につき、タイ人5人の雇用義務が発生します。
そのため、日本人雇用=マネージャーという企業も多いので、マネージメントの経験を積むチャンスは多いと思います。
タイ人向けのビジネスをメインにしている会社であれば、キャリアアップはできると思います。
ただこの手の求人はかなり少ないです。
日本人向けの求人は、日系企業のタイ支社の窓口的な役割や、タイ在住の日本人向けのビジネスをしている会社さんがほとんどなので、日本人が関係している企業で働くと大きなキャリアップは困難だと思います。
あくまで日系企業の海外に居る役割、海外に居る日本人向けのビジネスのキャリアになるので、日本に帰ってしまうとあまり活かす場がありません。
ハードルは上がりますが、別のノウハウや語学が吸収できる、外資系企業を選ばないと難しいと思います。
語学的・特殊能力のキャリアアップ
これは大いに期待できそうと考えてしまいそうですが、かなり努力が必要だと思います。
会社の公用語が英語指定されている企業であれば、ある程度の英語力は身に着くと思いますが、こういった企業に入社できるのはそもそもある程度英語が話せる方になります。
そういった方が飛躍的に英語が伸びるかといえば、タイ人で英語レベルが高い人も少ないので、少し伸びた程度になると思います。
日本でタイ関係の仕事に就くとすれば、タイ語のアドバンテージは少し持てるレベルになると思います。
ただし会社と日常で少し使う程度では、ビジネスレベルは遥か遠いですので、英語をより一層磨くのが良いということになると思います。
普通に生活して、家で少し語学を勉強する程度ではやはり大きなレベルアップは望めませんので、学校に通いながら堅実に勉強をすることになります。
海外で生活した経験や、異文化の中でのコミュニケーション能力などの意義がよく語られていますが、個人的にはこういった能力は一般的な日本企業で特にプラスにならないと思います。
日本社会の中では、プラスになる点とマイナスになる点があり、差し引きゼロ。
プラスが活きるような会社で働ければもちろん能力としては有効ですが、日本でそういった企業がどれほどあるかと考えると、キャリアップとしての難易度は高いと思います。
一般的な道筋での結論
基本的には、日本で働くよりキャリアップは困難というのが結論です。
目的と働く企業が明確で、そこに就職できれば話は別ですがあまりに選択肢が少ないです。
外資系の会社や海外に支社を持つ会社で、数年かけて海外転勤を狙うのが理想的な選択だと思います。
大手商社であれば難しいかもしれませんが、中堅クラスの会社に入り、アピールを続ければポスト空き次第で割とチャンスがあるように思います。
例えばリクルートの関連会社で外資転職を売りにしているJACリクルートメントやビズリーチで相談してみるのも良いかもしれません。
ただこの結論には、精神的な部分や日本での状況を考慮していません。
例えば日本の会社で働いていて、ポジションアップが望めない、部署移動も叶わない、日本が合わないなど、現状に問題がある方がそのまま日本の同じ会社で働いていても、ろくなキャリアアップにはならないと思います。
そう考えると、状況が悪い方はタイでリフレッシュしながら、小さなキャリアップを積んだとしても、今後の大きなキャリアップに繋がるということはあると思います。
自分でビジネスをする発想が生まれて、独立を目指すきっかけが生まれるかもしれません。
例外的にキャリアアップしやすい方法
日本で順調にキャリアを築いている方ですと、外資系に入る、もしくはタイ市場への展開をかなり積極的に進めている企業以外ですと、独立・副業することです。
別にタイに居ながらでも良いですし、タイとの接点を使って日本でビジネスをしてもいいと思います。
実際タイに住んでいることを武器にして、副業や独立をしている方が日本に比べて多いです。やはりタイに居るという武器が使えるので、比較的そのハードルは低いと思います。
海外に居ると独立心は生まれやすいと思いますし、タイで生活していると時間と物価の面でなにかとやりやすいことが多いです。
語学力の飛躍的なアップを目指すのもいいですし、今後の日本でビジネスをする際のトライアルとして小規模で何かをやるだけでも、かなり違う展開が見えてくると思います。
僕の結果
日本でのキャリアの続きでいうと、人単位のマネージメントではなく、組織や構造のマネージメントが次のステップアップでした。
タイで働いていた会社でそれがメインの仕事ではなかったのですが、大きな会社ではなかったので、そこを変えることにトライできるポジションではありました。
ただ日本の大きな会社のように構造的でなく、やはり日本人が働く会社なので、変化に対しては上層部が保守的で、そこに着手はできませんでした。
現場のマネージメントでいうと、能力がある人材を集めるのも難しく、仕事は入ってくるけど、実験的なことや高いレベルで実行することはできない。
最終的に結果を置きに行って、仕事を回していくことになりました。
もう少し具体的に言うと、成功の可能性は低いけど、やってみろといわれた仕事があります。
それを自分が描く成功のラインに乗せられないまま、とりあえず少しは前に進んでいるといった結果にすることばかり。
日本でやったことのない仕事はできましたが、トライできなかったので、ノウハウだけは学んだというレベルです。なので、能力的には大きくアップしていないです。
語学や特殊能力的な部分は、会社の共用語が日本語ということもありレベルアップは皆無。
現在は語学学校に行きつつ、外資系企業への就職を目論見中です。
また、独立・副業になりそうなことに手を付けていっています。
これができるのも、金銭的にも世間的にも許される、タイに居る日本人という利点だと思います。
住んでいるだけでは何も生まれない
よくある勘違いで、タイに行ったらなにかあるとか、タイに行ったらがんばるとか。
そういったことはありません。
数か月も経てば、日本に居るあなたに戻りますよ。
タイに来てからのゼロスタートは止めましょう。日本でできないことは、タイでもできません。
(なので、僕は仕事を辞めてやっています)
話が広がったので、まとめ。
キャリアがない方
職務経験が積める。但しブラック企業に要注意(キャリアがない方を採用する理由がある)。
マネージメントのチャンスは多い。
キャリアがある方
順当に行くと、日本に居るよりキャリアップは積めない。
外資系で働くと、キャリアアップが望めそう。
日本の状況が悪い方にとっては、タイで数年働くのはいいことだと思うけど、あくまで現状回復の先行投資。
帰国後に、溜めたパワーでのし上がる必要があります。
独立・副業でキャリアアップを目指すことも選択肢
失敗してもいいですし、途中で断念してもいいと思います。時間とコスト安、タイという要素でチャンスは多いと思います。
こういった経験はなかなかできませんし、利益も小さいかもしれませんが、トライした経験は大きな財産です。
1年経って何もできていなければ、自分にがっかりして帰国する。でいいと思います。
今回はあくまで仕事のキャリアアップのお話ですので、海外で生活/タイで生活する楽しさとかとは別のお話です。
タイの生活、楽しいですよ。