リアルに毎週カフェが数店舗オープンしているバンコクのコーヒー事情。
スペシャリティコーヒーを売りにしたカフェも増え、サードウェーブ系のドリップコーヒーを提供するお店も増えてきました。
僕は20年来のコーヒー愛好家で、タイのコーヒーにも興味を持ってカフェを回ってきました。
バンコクの有名なカフェやロースターを一通り訪れたので、ドリップコーヒーの美味しい店を紹介したいと思います。
僕のコーヒー歴
簡単に僕のコーヒー歴を紹介したいと思います。
ブラックコーヒーを愛飲する喫茶店の娘の影響で、17歳の時にコーヒーを覚えました。
大学時代を過ごした福岡では、後にカップテイスターのチャンピオンになる自家焙煎「蘭館」がアパートの近くにあり、本格的なコーヒーにはまるきっかけになりました。
その後は、カフェドカッファ、美美(びみ)など、福岡の名店に足を運ぶようになり、喫茶店やスタバでバイトもしました。
東京に住み始めてからも、週末は名店と呼ばれるコーヒーショップや焙煎店を訪れていました。
十一房珈琲、ランブル、堀口珈琲などの老舗から、北山珈琲や神保町の変化球系の喫茶店まで、週末はとりあえず本と珈琲で始まる生活をしていました。
三軒茶屋に住み始めてからは、カフェ・オブスキュラやNOZY COFFEEなど、セカンド~サードウェーブ世代のカフェによく行っていました。
舌の信頼性は置いておいて、美味しいコーヒーを日常的に口にしていた経験はあります。
バンコクでコーヒーが美味しいカフェ
バンコクでドリップコーヒーを出すお店はサードウェーブ系。基本的にやや浅煎りで、フレーバーが強く、味が薄めです。
Factory Coffee
タイのスペシャリティコーヒー界で、最も有名なカフェ「Factory Coffee(ファクトリーコーヒー)」。
有名すぎてオススメから外したい気持ちはあったのですが、その知名度は伊達ではないです。
ドリップコーヒー以上に、アレンジコーヒーで有名なお店ですが、取り扱いしている豆の種類も多いです。
本来はこういった独創的なアレンジメニューが得意なお店です。
このお店ではいくつかの種類のドリップコーヒーを飲みましたが、その中ではコスタリカが良かったです。
また2020年に入ってからはタイ産の豆の種類が増え、そちらの味も良かったので、今後の展開にも期待できるお店です。
Roots at commons
Commonsというオシャレなモールに入っている「Roots(ルーツ)」。
元々が専業のロースターさんだったこともあり、いいコーヒー農園と契約できているのか、ローストが優秀なのか、タイ産の豆はこのお店が一番美味しいです。
ドリップコーヒー(Filter Brew)は、タイ産のシングルオリジンのみです。
その中でも、特におすすめしたいのが「New Generationシリーズ」。
メニューを見ても分からないのですが、レジに販売用の豆が置かれていて、その中で黒のラベルのものが「New Generationシリーズ」です。
フレーバー重視で味のないコーヒーが多いタイのカフェに置いて、フレーバーと味、双方を満たしてくれるコーヒーです。
契約しているコーヒー農家さんや、豆の生成プロセスなどもしっかり説明してくれます。
▼次点はこのお店
このお店はバンコクでのドリップコーヒー巡りに目覚ましてくれたお店です。
始めて訪問した際のエルサルバドルが美味しくて、びっくりしました。
ただそれ以降の訪問時に他の豆を注文したところ、あのエルサルバドルと比べるとランク落ちのコーヒーしか出会っていないので次点にしましたが、潜在能力が高いお店だと思います。
取り扱い店のまとめ
■Factory Coffee(ファクトリーコーヒー)
最寄駅:BTS/エアポートリンク パヤタイ駅
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■Roots(ルーツ)
最寄駅:BTS/エアポートリンク パヤタイ駅
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■Red Diamond Cafe(レッドダイアモンド カフェ)
最寄駅:BTS/エアポートリンク パヤタイ駅
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■Karo Coffee Roaster(カロ コーヒー ロースター)
最寄駅:BTSプラカノン駅
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タイのドリップコーヒー事情
タイでドリップコーヒーを飲む上で知っておいて欲しいのが、日本とタイではドリップコーヒーの位置付けやコーヒーの文化が全く違うことです。
まずタイ及びタイ人でホットコーヒーの、しかもブラック飲む人はかなりの少数派になります。つまり売れ筋ではありません。
タイ人は基本アイスのラテやモカなどを甘いドリンクが大好きです。ブラックコーヒーを飲む人はかなり少数派で、しかもホットとなると更にその数を減らします。
しかもタイでは、ドリップコーヒーがアメリカーノより30%~80%高い。つまりタイでのドリップコーヒーは、ある程度の富裕層がファッション感覚で楽しむという要素が強い飲み物になります。
外国人はブラックコーヒーを飲む人は結構居ますが、暑い国タイではアイスを選びことが多いです。
そもそも欧米でもドリップコーヒーは一般的ではないですしね。タイでは価格が高く、提供までに時間がかかるので、わざわざドリップコーヒーを選ぶことが少ないです。
タイのドリップコーヒー
価格は、安いお店で80バーツ(280円)、平均的な価格は140バーツ(500円)になります。
アメリカーノがドリップコーヒーを出すレベルのお店で70バーツ(245円)ぐらいなので、ワンランク上の飲み物になり、モカやラテなどより高い飲み物になります。
140バーツ(500円)となると、ローカルのレストランで食事ができる価格なので、いかに高いか分かってもらえると思います。
それに日本よりタイのカフェは、立派なエスプレッソマシーンの普及率が高いです。そのため提供に時間がかかるドリップコーヒーを、アメリカーノと同じ価格で提供していては割に合いません。
また日本ではコーヒー豆というと、アフリカ、中米、南米の豆が主力ですが、タイではそこにタイ産の豆が加わります。
暑いイメージしかないタイですが、タイ北部の山の朝夜はフリースだけでは寒いくらい冷え込みます。つまりコーヒー栽培に適した気候で、政府支援の元、コーヒー栽培は広がりつつあります。
また海外産の豆はタイより物価が高い国のものであれば、価格が上がりますし、タイは輸入商品に対しての関税がものすごく高いです。
それ故にタイで消費されているメインのコーヒー豆は、タイ産になり、流通量も少なく、関税の高い海外産の豆は、品質の割に高価格になっていると思います。
タイの海外産コーヒー豆
海外産の豆が高いといっても、お店の運用コストや人件費が日本より安いタイで、140バーツ(500円)となるとそのクオリティーがどうなのか気になると思います。
正直なところ、クオリティは全体的に低いです。
自家焙煎をしているので、日本のどこにでもある喫茶店に比べれば美味しいのですが、日本の有名店と比べるとかなり味が落ちる店が多いです。
日本の専門店で評価が高いお店は、コンテストで評価を得た豆や農園と直接契約してクオリティの高いコーヒーを安定して提供してくれます。
タイで取り扱っている海外産の豆を見ていると、一様に同じ品種なので、恐らく海外から農園レベルで直接購入する流れは出来上がっていないのではないかと思います。
豆を仕入れても、それを飲むお客さんも少ないので、鮮度も考えると、どこかのお店が一定量を購入し、それを各店舗に卸していると考えるのが妥当かなと思います。
しかも豆のクオリティはいまいちですが、海外産のコーヒー豆の販売価格は日本の有名店より高いです。これは関税の高さと、ドリップコーヒー文化が富裕層メインであることが要因だと思います。
タイ産のコーヒー豆
タイではコーヒー豆の栽培に力を入れているといっても、味はまだまだ海外の豆より落ちるものが多いです。特徴として、ふくよかさがなく、味がフラットで若干ナッティーです。
海外産に比べると価格は安く設定されていますが、コスト以上にドリップコーヒーの価格は割高感があります。やはりタイでドリップコーヒーは付加価値のある抽出方法という位置づけです。
その代わり豆を購入するとかなり安いお店も多く、250g 350バーツ(1,200円)ぐらいで、そこそこまともなコーヒー豆を買うことができます。
タイのドリップコーヒーのトレンド
サードウェーブ系のフレーバー重視の傾向です。
大体のお店の一押しはハニープロセス(香りが強い)のベリー系。ローストはやや浅めですが、酸味はなく、味も薄めです。
これは豆のクオリティの問題とサードウェーブ系のトレンド、そしてタイ人がブラックコーヒーを飲まない、もしくはブラックコーヒーに免疫がないので薄い方が良いというのが要因かなと思います。
タイのブラックコーヒー文化は未だ無いに等しい状態で、2010年代中盤ぐらいから徐々に入ってきている状態です。つまりサードウェーブ系のお店がブラックコーヒー文化の始まりになります。
サードウェーブ系は香りが豊かでその点は好きですが、味が伴わないお店が多いのがネック。それをひとつの正解として焙煎し、豆のクオリティが追いつかず、味がよろしくないのだと思います。
またサードウェーブ系のお店は抽出が雑なことが多く、それでも充分美味しいという考え方もあるようですが、浅炒りのコーヒー豆は抽出による味のブレが大きいです。
そもそもこれまでのコーヒーとは良し悪しの考え方が違うので、この味のブレをあまり気にしていないのかもしれませんが、職人的なコーヒーを飲み続けてきた身としてはかなり気になります。
タイに限らずですが、トレンド系のお店のコーヒーは豆を買って自分で淹れた方が美味しいです。
タイで使われている抽出器具
タイで使用されているコーヒーの抽出器具は様々あり、主に日本のブランドの物が選ばれています。
ペーパードリッパー
一番人気は「ハリオ V60ドリッパー」。シェア率は断トツで高いです。
日本でコーヒー好きが使うドリッパーといえば「KONO式 ドリッパー」。円錐形は味のブレが少なく、日本の有名店の多くはこのドリッパーを使っていました。
大手メーカーであるハリオのV60(円錐形)が出てきてからは、流通面で下火ではありますが、デザインが可愛くて僕も愛用しています。
ステンレスドリッパー
ペーパードリップに比べ、油分やうま味がペーパーに吸収されないため、コーヒー豆の味をダイレクトに味わえる器具。僕もたまに使いますが、豆のローストや状態が整うと「ハッ」とするような美味しいコーヒーが抽出できます。
その見た目のカッコ良さも手伝って、欧米人が経営に関係しているカフェでは使用率が高いです。
コーヒープレス
短時間で空気圧を使って抽出するため、コーヒーのうま味を十分に引き出しつつ、すっきりした味で人気が高まっている抽出器具。置いているお店は少なめですが、今後取り扱うお店が増えていくと思います。
サイフォン
日本ではお馴染みのサイフォン。他の器具と合わせて使うと、設備や手間がネックになるので置いているお店は少ないですが、数店舗で使用しているのを見かけました。ただタイでは価格がプラスオンされるのが痛いところです。
タイのカフェはアレンジメニューが強い
ドリップコーヒーに関しては辛口になってしまうタイのコーヒー事情ですが、アイス系のアレンジメニューには目を見張るものがあります。
メニュー構成のバラティにも富んでいますし、タイ産の豆もエスプレッソマシーンで抽出したコーヒーを飲むと、豊かなフレーバーはそのままに、味の物足りなさもなくなります。
ここら辺のメニューは日本のカフェより遥かにレベルが高いと思います。
タイのカフェは楽しい
日本のスペシャリティコーヒーがいぶし銀の職人気質だとすれば、タイのカフェはエンターテイメント。
これにドリップコーヒー先進国の日本のようなクオリティを求める方が無理があるというもの。
ブラックで統一された「Black Hills bkk」。
廃工場をテーマに、アンティークな家具も置かれた「Red Diamond Cafe」。
ワイングラスで提供されるドリップコーヒー「Ministory Coffee」。
アートスペースのような「a coffee roaster by library」。
日本人が好む渋いカフェは少ないですが、コンセプトがあるカフェが多くて楽しいですよ。
タイのカフェの未来
今後より一層切磋琢磨されて、タイのコーヒーの味はどんどん良くなっていくと思います。
コーヒー豆の産地であることもそうですが、タイのカフェは他の物の物価と比べると高い。
特にドリップコーヒーを出すようなお店であれば尚のことですが、この価格帯でもビジネスとして勝負できる土壌があることが強いなと思います。
日本でカフェの経営となると、長時間労働、客単価が安くて儲からないという話をよく耳にします。
その点タイは物価が高い国から来た外国人が多く、貧富の差も大きいので、ローカルの物価に対して割高な価格設定がしやすい。
良し悪しは別として、日本に比べるとコーヒービジネスはしやすい。そういう状況もあり、今後もタイのカフェ文化どんどん伸びていくと思います。